第三章 流亡の民
◆◆◆ ローマの経済と民族の対立 ◆◆◆
この時代、ほとんどのローマ貴族は、地域に根ざしたラテン人やサビニ人の領主で、その経済基盤は領内で生産される農作物に依存していました。
それに比してエトルリア人は、貿易から得た資金を元にローマに進出し、商人出身のタルクィニウスは、元老院貴族への財政面の支援をもとに宮廷での地位を確立し、王位につきました。
続く、エトルリア出身のセルウィウス王、スペルブス王の時代に、合理性と豊富な財力、確かな技術力によって、ローマの都市基盤は整備され、着々とその勢力は拡大していきました。
しかし、農業と商業に従事する人々対立は、エトルリア人を重用した要職の交代や慣習の相違から生じる摩擦などから、やがて民族の対立に発展していきました。
エトルリア人最後のローマ王となったタルクィニウス家出身の王が、傲慢(スペルブス)王という渾名で呼ばれたのも、地元の貴族によって構成されていた元老院の助言を無視し、改革や遠征を敢行したことにも起因するとされています。
◆◆◆ 新規登場人物紹介 ◆◆◆
※新規ではないですが、本章から名前が変わって登場した人も整理のため紹介しています。●ファビア
本名:クラゥデイア
もとヴェギアの戦士:ファビアス・マルスス。
エトルリア人。前王セルウィウスの孫。
現在は、セクストゥスの侍女として宮廷で活動中。
●プブリウス・ヴァレリウス
本名:クレオーン・グラックス
ヴェギアの主導者。
メディアス・ヴァレリウスの養子となり、貴族の称号を得た。
現在は、ブルートゥスのもとで、秘書官として働いている。
●ルーキウス・ユニウス・ブルートゥス
前王セルウィウスの庶出の王子
クラウディアの母トゥッリアの異母弟。政治には関わらず、地方貴族として議会に出席している。
●ユリア
ブルートゥスの娘
プブリウスに好意を抱いている。
●ルーキウス・タルクィニウス・コラティヌス
スペルブス王の甥。
タルクィニウス家出身。セクストゥスのいとこであり、良き友人。
反体制派の貴族を集め、体制批判の集会を開いている。
●ルクレティア
コラティヌスの妻
怪我をしたクラゥディアを救った女性。
面倒見がいいことから、多くの貴族から慕われている。
●ヒュクルゴス
セクストゥスの友人
元は、王の親衛隊の一員だったが、いまはセクストゥスの良き飲み友達。
●レイラ
宮廷おかかえ医師の姪。
セクストゥスの幼なじみ
現在は、叔父の元で助手を務める傍ら、医者になる修行をしている。